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デトカン開発ルームを始めます

今、デトネーションカウンタ(通称デトカン)を開発しています。まだ試作段階なのですが、それなりに使えそうなので商品化に向けて動き出しています。ただこの機械使いこなせればとても有用なのですが、結構使い方が難しいです。そこで、デトネーションとは何かということから始まって、使い方のノウハウなどをアップして行こうと思っています。バイク、カートの両方について解説していきます。

デトネーションカウンタ開発の経緯

 デトネーションカウンタは2サイクルの二輪レーサー(RS125やRS250など)の世界では10年以上前から使われています。昔はアブガス、エルフガスといったノッキングの起きにくいガソリンの使用が認められていたのですが、15年ほど前でしょうか国内のレースで無鉛ガソリンの使用が義務付けられるようになりました。ガソリンが変わった結果、ノッキングが出やすくなり、エンジンの焼きつきが多発、セッティングを出すためのツールとしてHRCからデトネーションカウンタがだされ、それ以降はデトカンのカウント値を見ながらキャブセットを出すようになります。

 一方、レーシングカートの世界では、数年前にエンジンが空冷から水冷に変わり(全日本スプリントのカテゴリーで)、排気量も125ccとなりました。そしてここでも、15年前の二輪と同じように焼きつきが多発、対策としてノッキングの発生を検出してエンジンを壊さないようにするためにHRCのデトネーションカウンタを導入しようとするのですが、HRCのデトカンはあくまでもバイクのRS用であるために、カートのエンジンの種類によって、検出できたりできなかったりという問題がありました。また、バイクのレースは2サイクルから4サイクルへの移行が決まっており、2012年からはすべて4サイクルのエンジンになってしまいます。このため、HRCのパーツとしていつまでデトカンが販売されるか不透明な部分もあります。

 このような背景があって、カートにも使えるデトネーションカウンタを作ることができないか、という相談をされたのが2009年の年末、そこから開発がスタートしました。

デトネーションって何?

まず、デトネーションとは何かというところを簡単に、と思ったのですが調べてみるといろいろな記述があって調べれば調べるほどわからなくなります。

2サイクル、4サイクルに限らずレース用のガソリンエンジンは圧縮されたガソリンと空気の混合ガスにプラグ火花で点火し、燃焼によるガスの膨張する力をピストンで受け、クランクで回転運動に変換しています。通常であれば、プラグ火花で燃焼が開始され、燃え広がり、ピストンが押し下げられていく途中で混合ガスが燃え尽きるのですが、燃焼室のコンディションによっては意図しないタイミングで燃焼が開始されてしまうことがあります。いわゆる異常燃焼と呼ばれる現象で、プラグ点火前に燃焼が始まってしまうケースと、プラグ点火後に燃焼の伝播とは関係のないところで燃焼が始まるケースに大きく分けられます。

前者のプラグ点火前に燃焼が始まってしまうタイプの異常燃焼は、シリンダやヘッドの冷却が不十分であったり、カーボンなどの堆積物などで燃焼室内にヒートスポット(部分的に高温になっている部分)があると、そこでガスに自然着火してしまいます。早期着火(プレイグニッション)と呼ばれます。正確には早期着火に起因する爆発的な燃焼状態をデトネーションと呼ぶようです。プレイグニッションに起因する異常燃焼は数サイクル発生しただけでエンジンに致命的なダメージを与えることがあるそうです。

一方、後者のプラグ点火後の異常燃焼はノッキングと言われます。これはプラグ点火の後燃え広がっていく燃焼ガスに圧迫された未燃焼ガスが突如燃え始める現象で、通常の燃焼による圧力上昇に加えて、異常燃焼による圧力上昇も加わるためにシリンダ内が非常に高圧になります。この高圧力は衝撃波となりエンジン内部にダメージを及ぼすことがあります。衝撃波がキンキンと音を出すためにノックと言われる理由です。

細かい定義としてはいろいろあるみたいなのですが、自動車業界ではエンジンにダメージを与えるような異常燃焼のことをデトネーションと呼ぶことが多いようです。

デトネーションが起きるとどうなるか

デトネーションが起きるとどうなるのでしょうか。写真はピストンダメージの一例です。RS125の走行後のピストンです。

ピストンヘッドの外周部分がザクザクに荒れている様子がわかります。ピストンリングも一部固着しています。

シリンダー内のガス燃焼温度は2000度を超えるといわれています。一方でピストンやシリンダヘッドの材質であるアルミは550度前後で溶けてしまうのですが、普通にエンジンを動かしてもエンジンが溶けてしまわないのは、アルミと燃焼ガスの間に薄い空気の層があって、アルミが直接高温ガスにさらされないからです。ところが異常燃焼を起こし急激な圧力上昇があると、高温の燃焼ガスが境界の層を突き破ってアルミ表面をチリチリ溶かしてしまうことになります。

ガスの燃焼はプラグを起点に外側に拡がっていくので、異常燃焼が起きるのは、最後まで高圧の未燃焼ガスが残るピストンの外周部から始まることが多いため、このようなダメージとなります。

レースが終わってこの状態であればまだピストン交換だけで済むのですが、このまま走行を続けてしまうと、荒れたピストンヘッドがさらに熱を持って異常燃焼が起きやすくなるために、ダメージが加速して行きます。その結果、リングが固着して焼きついたり、ピストンヘッドが溶け落ちたりする可能性が高くなっていきます。

デトネーションはどんなときに起きるのか

デトネーションはどのような状況で起こるのでしょうか。要因はいろいろあると思いますが、まず最も大きく影響を受けるのがキャブレターセッティングです。キャブセットが薄くなるとデトネーションが出やすくなる傾向があります。デトネーションが起きるのは全開時とは限らず、ハーフアクセル時でも薄ければ起きることがあります。また、アクセルを急に開けたときなども空燃比のバランスが崩れて起きることがあります。

エンジンが壊れてしまっては仕方が無いのでキャブセットを少し濃くして走ればいいのではないかという話もありますが、デトネーションが出るか出ないかのぎりぎりの領域はエンジンとしても最もパワーが出てくる領域でもあるため、エンジンは壊したくないけど速く走りたいというジレンマのなかでドライバーとメカニックが四苦八苦することになるわけです。

もうひとつデトネーション発生に影響を与える要素としてエンジンに対する負荷があります。負荷が軽いとき、たとえばエンジン暖気中の場合などは、多少キャブセットが薄くてもデトネーションはほとんど起きません。燃焼圧力の増大と共にピストンがスムーズに押し下げられるので高圧状態になりにくいからです。逆に考えると厳しい状況というのは、例えば上り坂や、低速コーナーからの急加速、大きな横Gを受けながらのコーナリングなどです。燃焼圧力は上がってきているのに、負荷が大きいためピストンが動きにくく、さらに圧力が上がるため、異常燃焼がおきやすい状況が出てきます。

例えば、ぎりぎりにキャブセットされたカートなどでは、路面にゴムが乗ってグリップが上がったり、新品タイヤに履き替えた走行ではデトネーションの発生回数が増加する傾向が見られます。グリップが向上したことでエンジンに対する負荷が増えたことが原因と考えられます。

デトネーションカウンターとは

デトネーションとは何かという説明が終わり、次はデトネーションカウンターという機械に何ができるのかという解説です。

簡単に言うと異常燃焼の発生を検出して、走行中に何回のデトネーションが発生したかを知らせる機械(カウンター)です。プラグとシリンダヘッドの間にリング状の圧力センサーを挟み、デトネーションが発生したときの異常な圧力変化を検出する仕組みです。

これを使うことにより、デトネーションの発生状況を客観的に知ることができます。例えば全くカウントされていなければデトネーションは起きていないということなので、もう少しキャブを薄くできそうとか、逆に短時間でたくさんカウントされるようであれば濃い目にセットを変えよう、といった方向性を決める目安として使うことができます。乗り手のフィーリングだけに頼らずに面倒なキャブセットの方向を決められるのでとても便利です。

また、デトネーションの回数とピストンダメージにはある程度の関連があり、カウントが多ければダメージも大きくなっている可能性が高いことが予想されます。デトネーションのカウント数を管理することでピストンなどの交換タイミングを決めることができます。

デトネーションカウンタの機能について

今回開発したデトネーションカウンタの主な機能を紹介します。

= センサー感度、レベル設定の調整機能 =

HRCのデトネーションカウンタはレーサーのRSにあわせて作られていますので、ついているボタンはカウンタのクリアボタンひとつだけのシンプルな構造です。ところが、今回開発しようとしているデトカンではエンジンの種類によって、あるいはチューニングの違いによって出方の異なるデトネーションを検出する必要があります。そこで、センサーの感度調整機能や、デトネーションをカウントするときのしきい値レベルの調整機能を入れることにしました。これらの設定を変えることで、水冷エンジンのみならず、空冷エンジンも含めた対応が可能になります。ただし逆に言うと、設定が適切でないと正しくデトネーションの検出ができないということにもなりますので、使う側から見ると少し面倒な部分もあります。エンジンのチューニングが許されないようなカテゴリーであれば、設定値はひとつに決まってくるはずなので、基本的な設定値は順次公開していく予定です。

= LEDフラッシャによるデトネーション発生通知機能 =

LEDフラッシャとは、LEDを使ったランプのことで、これをハンドルやメーター周りなど見やすいところに取り付けておいて、デトネーションが発生したときに光らせることでドライバーに知らせる機能です。2色のLED(赤、緑)で、うまくレベル設定をすることで、小さなデトネーションの発生の場合は緑、大きなデトネーションの時は赤が光るといった使い分けができます。

= デトネーション圧力の平均値と最大値を記録 =

これまでのデトカンはデトネーションの発生は検出できても、その圧力の大きさまでは知ることができませんでした。そこで、検出されたデトネーション圧力の平均値(AVRG)と最大値(PEAK)を記録できるようにしています。カウント値とあわせてこれらの値を見ることで、例えば200回カウントが出たけど圧力レベルは低いので問題ないとか、逆に50回しかカウントしていないけど圧力レベルが高いので要注意といった判断の材料として使うことができます。

= ロガーへのデータ出力機能 =

最近ではロガーを使って走行の様子やエンジンの状態を記録し、走行後に分析を行うという手法が当たり前になってきました。ロガーにデトネーションの情報も記録することで、デトネーションがコースのどこで起きているのか、どんなアクセルワークのときにおきやすいのかといった情報を知ることができます。デトカンからの出力はデトネーション圧力の大きさに比例した0-5Vのアナログ値が出力されるので、キャブセットや路面などの状態変化に伴うデトネーションの発生状況の変化を知ることができます。

KDS-Proセット概要

さて、長い前振りはこれくらいにして開発したデトカンの紹介です。名称はKDS-Pro。KDSはKnock Detection Systemの略です。写真はフルセットの構成で、上段左からレーシングカート用ハーネス、KDS-Pro本体、ユーザーズマニュアル、下段左から、ロガー用ハーネス、LEDフラッシャ、プラグ座面圧力センサーとなります。バイクなどでHRCのデトカンの代わりに使う場合はカート用ハーネスがバイク用のハーネスに変更になります。

KDS-Pro本体

KDS-Proの本体です。大きさは70x50x20mm(コネクタ含まず)、重さは100gです。外装はアルミの削りだしでアルマイトをかけてあります。ディスプレイはバックライト付でキーを押すと5秒間バックライトが点灯しその後は消えます。バッテリー節約のためです。

コネクタは本体下部に3個、左からメインハーネス用、ロガー出力用、LEDフラッシャ用となります。コネクタはBINDER719シリーズのコネクタを使用しています。

裏面、ねじ以外に開いている小さな穴はセンサーの感度調整用ボリュームです。細いマイナスドライバで調整します。

プラグ座面圧力センサー

次はこのシステムのキーデバイスといってよいでしょう。プラグ座面圧力センサーです。ケーブルがついている丸い輪の中に圧力を電圧に変える素子(圧電素子という)が入っていて、輪にかかる圧力が変わると電圧の違いとなって信号が出てきます。センサーの内径は約14mm、つまりプラグのねじ径が14mmのもの専用のセンサーとなります。余談ですが、私の大学のときの論文の研究テーマが実はこの材料に関する研究でした。右の輪は銅ワッシャーです。

写真のようにプラグに挟み込んで使用します。プラグのねじの部分に挟み込まれるため、通常使用しているプラグよりもねじ部の長いプラグを使用することになります。例えばねじ部が19mmの長さのプラグを通常使用している場合は、このセンサーを使うときにはねじ部が22mmの長さのプラグを使います。プラグは締め付けトルク2.5kgf/mで締め付けます。締め付けトルクが変わると、出力される圧力レベルの信号も違ってくるために、正しい計測ができなくなります。

銅ワッシャーは通常写真のようにセンサーとプラグ座面の間に挟みますが、取り付けの関係で銅ワッシャーをシリンダヘッド側に取り付けたい場合も出てきます。メーカーによると構造上はそうしても問題ないそうですが、センサーとヘッドの間に物が挟まることによって少し感度が鈍くなるそうなので注意が必要です。また、銅ワッシャーの厚さを変えてプラグの突き出し量を変えたりすることもあるようです。

LEDフラッシャー

上下3個ずつが緑と赤に分かれています。写真はテストモードで両方光らせていますが、実際の使用においては赤か緑かのどちらかが光ります(赤、緑が連続で光ると、同時に光っているように見えるかもしれませんが)。カートの場合はハンドル上部、バイクの場合はメーター周辺など見やすいところに取り付けます。LEDはかなり明るく光るようにしてありますが、晴天で日差しが強くて見づらいときは、フラッシャの上に小さなひさしをつけると多少見やすくなります。

ユーザーズマニュアル

KDS-Proのユーザーズマニュアルです。日本語版に加えてなんとすでに英語版もあります。ご使用の際はマニュアルをよく読んで適切に設定をしてください。

日本語版マニュアル

英語版マニュアル

ぱっちん

デトカンを使い慣れてくると、フラッシャの点灯を目安にキャブセットをあわせることができるようになってくると思います。まずは濃い状態で走り出して少しずつ絞っていき、ランプが光りだすところまで絞って、そのあたりを中心にキャブセットを調整することになるでしょう。ただし、注意しないといけないのが、このような合わせ方をするには、デトカン本体の動作が正常であることはもちろん、センサーの取り付け、ハーネスの接続が適切に行われていることが大前提です。特にハーネスの断線などは外から見て一見わからないことも多いので要注意です。そこでデトカンのシステムとして正常に動作するかを確認するための秘密兵器がこれ、通称”ぱっちん”です。

上図のようにプラグ座面センサーを”ぱっちん”にはさんで、下図のように重りを半分ほど引っ張って手を離すと、ばねで重りがセンサーの固定部分に”ぱっちん”とぶつかって衝撃が発生します。実に安易なネーミングですが、これでデトカンがカウントアップすればOKです。

旋盤の練習にぴったりのお手軽ツールです。